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6章 あなたに適した方針

名曲を生み出す作曲家・作詞家・実演家でさえ、レコード会社などにその財産権を譲渡して活動しています。その理由は、優れた著作物を創作出来る人が他の活動も同様に優れているとは限らないからです。

「あなたの著作物のおかげで多くの関係者が経済的利益を得ている」 と同時に 「多くの関係者のおかげであなたの著作物は経済的利益を生んでいる」 と言えます。

著作物を中心に成立する以上、なによりもまず優れた著作物 (詞と曲) を生み出すことに注力しなければいけません。アートワーク・ファッション・PV・衣装・ステージ・プロモーション活動などは著作物を利用したい人を増やすための手段でしかないからです。高い志や感性もそれ自体は著作物ではありません。

著作物で経済的利益を得ることは 「あなたの詞と曲を利用したい人を増やす」 ことに集約されます。 どれだけ広告に資金を投じても著作物自体に魅力がなければ長続きしません。本末が逆転しているからです。

500万円の衣装を着せてもらっても駄曲は駄曲。対価を支払ってまで利用したいと思わせる魅力ある詞と曲が原理的に必要です。その上で、あなたの理想に適した活動方針を選ぶことで、持続的に経済的利益を得られる可能性が高くなります。

例えばメジャーレーベルは利益の確保を優先します。リスクを軽減できるビジネス戦略が必要です。音楽出版社がアニメ製作会社を抱えることができれば、自社の管理楽曲を優先的に主題歌に使うことが可能になります。あなたの著作物が活かされる機会が多くなるでしょう。しかし高い利益率には複数の出資者や権利者が関わり、思惑や指揮系統が複雑になります。

メジャーレーベルにはこうした特徴があり、同じようにインディーズレーベル・自主制作にも特徴があります。

メジャーレーベル

メジャーレーベル

メジャーレーベル (日本レコード協会正会員のレコード会社) は音楽出版社レコード会社プロダクションの三者で構成されます。

その連携力により、著作物の伝達に対する推進力が最も強いのが特徴です。そのため利益も非常に大きくなります。力技で著作物が売れる状況を生み出すこともできます。

反面、著作物伝達に関わる人が多く、第三者の意向に沿うことを強く求められる場面があります。

例えば契約期間内に多くの楽曲・原盤を作ってもらった方が回収率が高まります。優れた著作物を生み出せなければ、第三者の曲をあてがわれたり、不本意なカバーで時間稼ぎさせられることもあるでしょう。駄曲でも盛大にプロモーションされる状況に葛藤するかもしれません。つまりビジネス色が強いと表現することができます。

ビジネスとしてアーティストに投資するため、回収できないと損失になります。利益が上がらない状況が続くと死に筋商品となり、あなたに契約更新の意思があっても契約満了となります。

良質の詞と曲を定期的に発表できる創作能力と速度、副次的に、多くの利用者に訴求しうるファッション性や容姿の素地が求められます。

インディーズレーベル

インディーズレーベル

インディーズレーベルはメジャーレーベルより規模が小さくなります。音楽出版社レコード会社プロダクションのうち、1社で2つの役割を担うケース、または3つすべての役割を担うケースがあります。

併せて著作物伝達に対する推進力も小さくなる一方、関わる人も少なくなります。これは良い作用も悪い作用も働きます。

前者の例として、アーティスト本人の意向優先で著作物を創作・発行しえることを挙げられます。一般層向けではない著作物であったとしても、あなたの独自性が商品価値そのものです。

後者の例は、資金力の限界を挙げられます。宣伝やマネジメントの限界がボトルネックになりえます。それは利益に直結し、場合によっては他に職を持ちながら音楽活動することになります。

レーベルによって取り扱うアーティスト性に得手不得手があります。あなたのアーティスト性と相性が良いほどスタッフがあなたを活かしやすくなります。所属するレーベルが利益よりも面白さを優先する社風であれば、長期にわたってあなたの独創性を買ってくれるでしょう。

明確な主張や独創的でぶれない才能・音楽性が求められます。

自主制作

自主制作

現在では編集ソフトなどを使い、自宅にいながらひとりで原盤を作ることができます。マスタリングとプレスを外注すれば商業用レコードを製作することもでき、利益の100%を得ることができる活動です。

アーティスト主導により指揮されるため、良くも悪くもアーティストの実力・才能が装飾されず具現化します。登録手続き・権利管理・売込みなどの全てをアーティスト自身で行う必要があるため、音楽活動以外に忙殺されます。利益に至る前に頓挫しやすく、強い意志と活動を持続できる環境が必要となります。

以上のようにそれぞれに特徴があり、何が良いかは、アーティストの理想や活動状況に応じて相対的です。段階的に活動場所を変えることも選択肢です。いずれにしても、著作権を理解しその所在を明確にしておくことが重要です。そうすることで、著作物に対する正当な対価を得ることができます。

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※著作権法をもとに制作現場の一般事情を加味し、かつ音楽分野の視点で構成しています。図版・文章の正確性を保障するものではありません。詳しくは文化庁発行の 「著作権テキスト」 「著作権に関する教材資料等」 をご覧ください。
※このおぼえがきは平成25年に書いたものです。閲覧されている現在の状況とは異なる場合があります。
※参考文献 : 『著作権テキスト/文化庁』 『すぐに役立つ音楽著作権講座/秀間修一』