HOME

TOP




5章 レコード製作者の権利

著作権法では原盤制作に必要な費用を支払った者を 「レコード製作者」 と呼びます (スタジオ使用料・エンジニアの料金・バックミュージシャンの演奏料・編曲料・機材の使用料・レコーディング時の飲食代など。マスタリング作業は原盤制作に含まれない) 。

レコード製作者は著作権法のもと著作者実演家とは異なった権利・著作隣接権を有します。例えばあなたが創作した詞や曲をあなた自身で歌唱・演奏し、さらに原盤制作にかかる全ての費用をすべて負担した場合、あなたは著作者であり実演家でありレコード製作者となります。

レコード製作者の権利は 「6種類のレコード製作者の財産権」 で構成されます。レコード製作者に人格権はありません。

レコード製作者の権利
レコード製作者の財産権

複製権

送信可能化権

譲渡権

貸与権

CD等の放送・有線放送について使用料を請求できる権利

CD等のレンタルについて使用料を請求できる権利

レコード製作者の財産権 (のうち許諾権)

レコード製作者の財産的利益を保護する権利のうち、許諾 (利用を許可するかしないか決定) できる権利です。 「複製権」 「送信可能化権」 「譲渡権」 「貸与権」 があり、ひとつひとつ個別に異なる他人に譲渡できます。 (出典 同法第六十一条第1項及び第百三条)

複製権

「レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。」 (同法第九十六条)

あなたが全ての制作費を負担した原盤に収録されているレコード (音) の複製を許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

送信可能化権

「レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有する。」 (同法第九十六条の二)

あなたが全ての制作費を負担した原盤に収録されているレコード (音) の送信可能化を許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

譲渡権

「レコード製作者は、そのレコードをその複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。」 (同法第九十七条の二第1項)

あなたが全ての制作費を負担した原盤に収録されているレコード (音) の複製物を、譲渡 (販売やプレゼント) によって公衆への提供することを許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

ただし著作者の譲渡権同様、レコード製作者の譲渡権もいったん適法に譲渡された物に対しては適用されません。 (出典 同法第九十七条の二第2項)

貸与権

「レコード製作者は、そのレコードをそれが複製されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。」 (同法第九十七条の三第1項)

あなたが全ての制作費を負担した原盤に収録されているレコード (音) を複製して製造した商業用レコードを、貸与によって公衆への提供することを許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

著作者の貸与の許諾が権利存続期間中適用され続けるのに対し、レコード製作者の貸与権は、最初に販売された日から起算して一月以上十二月を超えない範囲内 (1年間) に対してのみ適用されます。 (同法第九十七条の三第2項)

2年目以降は、後述のCD等のレンタルについて使用料を請求できる権利に移行します。

レコード製作者の財産権 (のうち報酬請求権)

レコード製作者の財産的利益を保護する権利のうち利用者に対して報酬を請求できる権利です。 「CD等の放送・有線放送について使用料を請求できる権利」 「CD等のレンタルについて使用料を請求できる権利」 があり、ひとつひとつ個別に異なる他人に譲渡できます。 (出典 同法第六十一条第1項及び第百三条)

許諾権 (利用を許可するかしないかの決定権) ではなく、あくまで報酬を請求できる権利です。利用そのものを差し止めるようなことはできません。比較すると許諾権よりも弱い権利と言えます。

CD等の放送・有線放送について使用料を請求できる権利

「放送事業者等は、商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行つた場合 (営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金 (いずれの名義をもつてするかを問わず、レコードに係る音の提示につき受ける対価をいう。) を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行つた場合を除く。) には、そのレコード (第八条第一号から第四号までに掲げるレコードで著作隣接権の存続期間内のものに限る。) に係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならない。」 (同法第九十七条)

あなたが全ての制作費を負担した原盤に収録されているレコード (音) を複製して製造した商業用レコードが放送・有線放送で利用された場合 、放送事業者及び有線放送事業者に対して利用料を請求できる権利です。 ただし非営利・無料の場合は適用されません。

CD等のレンタルについて使用料を請求できる権利

「貸レコード業者は、期間経過商業用レコードの貸与によりレコードを公衆に提供した場合には、当該レコード (著作隣接権の存続期間内のものに限る。) に係るレコード製作者に相当な額の報酬を支払わなければならない。」 (同法第九十七条の三第3項)

あなたが全ての制作費を負担した原盤に収録されているレコード (音) を複製して製造した商業用レコード公衆向けにレンタルされた際、最初に販売された日から起算して2年目から50年目までの間、その貸レコード業者に対して利用料を請求できる権利です。

なお1年目は貸与権が適用されます。

以上の6種類がレコード製作者の財産権です。

備考

レコード製作者の権利には以下の備考が添えられています。

登録の必要なくレコード製作者の権利が発生する

「前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」 (同法第八十九条第5項)

著作者の権利同様、登録の必要なく著作権が発生します。

レコード製作者の権利は、著作者の権利および実演家の権利とは別に保護される

「この章の規定は、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならない。」 (同法第九十条)

著作者の権利実演家の権利とレコード製作者の権利は別に保護されます。

レコード製作者の財産権は他人に譲渡できる

「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」 (同法第六十一条第1項) 「第六十一条第一項の規定は著作隣接権の譲渡について (中略) 準用する。」 (同法第百三条)

レコード製作者の財産権はその一部または全部を譲渡することができます。権利のひとつひとつを別々の他人に譲渡することもできます。

発行後50年経つまで保護される

「著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時に始まる。レコードに関しては、その音を最初に固定した時」 (同法第百一条第1項第二号)
「著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時をもつて満了する。レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年 (その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して五十年を経過する時までの間に発行されなかつたときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して五十年) を経過した時」 (同法第百一条第2項第二号)

レコード製作者の財産権は原盤を制作した時から保護されます。そしてその原盤複製した最初のレコードの発売日の翌年から起算して50年を経過する時点まで存続します。その音が最初に固定された日の翌年から起算して50年経つまで発行されなかった場合、その時点で保護が終了します。

例えば2000年1月15日に制作された原盤を2002年12月1日に最初に発行したレコードは、翌年2003年1月1日から起算して50年後の2053年12月31日まで保護されます。

以上がレコード製作者の権利に付随する主な特記事項です。

3章 著作者の権利」 ・ 「4章 実演家の権利」 ・ 「5章 レコード製作者の権利」 からわかるように、販売されているアルバム作品には 「著作者・実演家・レコード製作者」 の3つの権利が含まれています。活動規模は違っても、日本の著作権法下で3つの権利は同じです。

最後に、活動規模による長所と短所について見ていきましょう。

← 4章 実演家の権利 はじめに 6章 あなたに適した方針 →

※著作権法をもとに制作現場の一般事情を加味し、かつ音楽分野の視点で構成しています。図版・文章の正確性を保障するものではありません。詳しくは文化庁発行の 「著作権テキスト」 「著作権に関する教材資料等」 をご覧ください。
※このおぼえがきは平成25年に書いたものです。閲覧されている現在の状況とは異なる場合があります。
※参考文献 : 『著作権テキスト/文化庁』 『すぐに役立つ音楽著作権講座/秀間修一』