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4章 実演家の権利

著作権法では著作物を歌唱・演奏した者を 「実演家」 と呼びます。実演家は、著作者の権利とは異なった権利・著作隣接権を有します。例えばあなたが詞や曲を創作しさらに歌唱・演奏もする場合、あなたは著作者であり実演家となります。

実演家の権利は 「2種類の実演家人格権」 と 「8種類の実演家の財産権」 で構成され、 「曲Aの氏名表示権・曲Bの氏名表示権…」 のようにそれぞれ個別に保護されます。

実演家の権利
実演家人格権実演家の財産権

氏名表示権

同一性保持権

録音権・録画権

放送権・有線放送権

送信可能化権

譲渡権

貸与権

CD等の放送・有線放送について
使用料を請求できる権利

CD等のレンタルについて
使用料を請求できる権利

生の実演が含まれる放送の
有線放送による同時再送信について
使用料を請求できる権利

それでは一つずつ見ていきましょう。


実演家人格権

実演家の人格的利益を保護するための権利です。 「氏名表示権」 「同一性保持権」 があります。実演家人格権は一身専属性を有します。たとえ本人が望んでも他人に譲渡できず放棄もできません。 (出典 同法第百一条の二)

氏名表示権

「実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有する。」 (同法第九十条の二)

あなたが実演した著作物の公表にあたり実演家名を表示するかしないか、表示する場合実名 (本名) と変名 (芸名) どちらにするかなどをあなたが決定できる権利です。例えばあなたが実演した著作物が公表される際 「私の実名を実演家名として表示してください」 と指定できることを意味します。

ただし実演の利用の目的及び態様に照らし、実演家がその実演の実演家であることを主張する利害を害するおそれがないと認められる場合、または公正な慣行に反しないと認められる場合は実演家名の表示を省略することができます。 (出典 同法第九十の二条第3項)

同一性保持権

「実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする。」 (同法第九十条の三第1項)

あなたの実演が下手に聞こえるような変更・切除その他の改変受けない権利です。意に反する時点で適用される著作者の同一性保持権と比べて、実演家の同一性保持権は客観的に判断されます。例えばもしその改変が名誉または声望を"上げる"ものであると判断された場合、適用されないことを意味します。

ただし実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変、または公正な慣行に反しないと認められる改変には適用されません。 (出典 同法第九十条の三第2項)

以上の2種類が実演家人格権です。

実演家の財産権 (のうち許諾権)

実演家の財産的利益を保護する権利のうち、許諾 (利用を許可するかしないか決定) できる権利です。 「録音権・録画権」 「放送権・有線放送権」 「送信可能化権」 「譲渡権」 「貸与権」 があり、ひとつひとつ個別に異なる他人に譲渡できます。 (出典 同法第六十一条第1項及び第百三条)

※原盤制作の現場では恒常的なメンバー以外に、スタジオミュージシャン (実演家) がその場限りの演奏することがあります。その場合その実演家は、実演の利用料と引換えに実演家の財産権をレコード製作者に譲渡することがあります。

録音権・録画権

「実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。」 (同法第九十一条第1項)

あなたの実演の録音・録画を許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

著作権法上の録音録画は、自分の実演が録音・録画されたCD・DVDを複製することも録音・録画にあたります。ただしいったん録音権・録画権を有する者の許諾を得て映画の著作物に録音・録画された実演は、これを録音物に録音する場合を除き適用されません。 (出典 同法第九十一条第2項)

よって実演家の録音権・録画権は以下の実演に対して適用されます。

  • 「あなたの生の実演の録音・録画」
  • 「自分の実演が録音・録画されたCD・DVDの複製」
  • 「あなたに無断で映画の著作物に録音・録画されたあなたの実演」
  • 「あなたの許諾を得て映画の著作物に録音・録画されたあなたの実演が録音物に録音される場合 (サウンドトラック化など) 」

なおライブを撮影した"写真"は静止画です。 「影像を連続して物に固定」 にあたらないため録画権は適用されません。 (肖像権やパブリシティ権は主張できます)

放送権・有線放送権

「実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。」 (同法第九十二条第1項)

あなたの実演の放送・有線放送を許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

前掲の録音権・録画権同様の適用範囲が定義されています。 (出典 同法第九十二条第2項)

よって実演家の放送権・有線放送権は以下の実演に対して適用されます。

  • 「あなたの生の実演の放送・有線放送」
  • 「あなたに無断で録音されたレコードを用いての放送・有線放送」
  • 「あなたに無断で録音・録画された映画の著作物を用いての放送・有線放送」
  • 「あなたの許諾を得て録音・録画された映画の著作物のあなたの実演が録音された録音物 (サウンドトラックなど) を用いての放送・有線放送」

例えばいったんあなたの許諾を得てあなたの実演を録音・録画した映画の著作物は、あなたに事前の連絡なく放送されうることを意味します。

送信可能化権

「実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。」 (同法第九十二条の二第1項)

あなたの実演の送信可能化を許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

前掲の録音権・録画権同様の適用範囲が定義されています。 (出典 同法第九十二条の二第2項)

よって実演家の送信可能化権は以下の実演に対して適用されます。

  • 「あなたの生の実演のサーバーなどを通じたインターネット放送などによる送信可能化」
  • 「あなたに無断で録音されたレコードを用いての送信可能化」
  • 「あなたに無断で録音・録画された映画の著作物を用いての送信可能化」
  • 「あなたの許諾を得て録音・録画された映画の著作物のあなたの実演が録音された録音物 (サウンドトラックなど) を用いての送信可能化」

譲渡権

「実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。」 (同法第九十五条の二第1項)

あなたの実演が録音された録音物を譲渡 (販売やプレゼント) によって公衆への提供することを許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

前掲の録音権・録画権同様の適用範囲が定義されています。 (出典 同法第九十五条の二第2項)

よって実演家の譲渡権は以下の実演に対して適用されます。

  • 「あなたの実演が録音された商業用レコード (など) の公衆への譲渡」
  • 「あなたに無断で映画の著作物に録音・録画された実演の複製物の公衆への譲渡」
  • 「あなたの許諾を得て録音・録画された映画の著作物のあなたの実演が録音された録音物 (サウンドトラックなど) の公衆への譲渡」

ただし著作者の譲渡権同様、実演家の譲渡権もいったん適法に譲渡された物に対しては適用されません。 (出典 同法九十五条の二第3項)

貸与権

「実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。」 (同法第九十五条の三)

あなたの実演が録音された商業用レコードを貸与によって公衆への提供することを許可するかしないかあなたが決定できる権利です。

著作者の貸与の許諾が権利存続期間中適用され続けるのに対し、実演家の貸与権は、最初に販売された日から起算して一月以上十二月を超えない範囲内 (1年間) に対してのみ適用されます。 (出典 同法第九十五条の三第3項)

よって実演家の貸与権は以下の貸与に対して適用されます。

  • 「あなたの実演が録音された商業用レコードの販売後1年以内の貸与」

2年目以降は、後述のCD等のレンタルについて使用料を請求できる権利に移行します。

実演家の財産権 (のうち報酬請求権)

実演家の財産的利益を保護する権利のうち、利用者に対して報酬を請求できる権利です。 「CD等の放送・有線放送について使用料を請求できる権利」 「CD等のレンタルについて使用料を請求できる権利」 「生の実演が含まれる放送の 「有線放送」 による同時再送信について使用料を請求できる権利」 があり、ひとつひとつ個別に異なる他人に譲渡できます。 (出典 同法第六十一条第1項及び第百三条)

許諾権 (利用を許可するかしないかの決定権) ではなく、あくまで報酬を請求できる権利です。利用そのものを差し止めるようなことはできません。比較すると許諾権よりも弱い権利と言えます。

CD等の放送・有線放送について使用料を請求できる権利

「放送事業者及び有線放送事業者 (以下この条及び第九十七条第一項において 「放送事業者等」 という。) は、第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行つた場合 (営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行つた場合を除く。) には、当該実演 (第七条第一号から第六号までに掲げる実演で著作隣接権の存続期間内のものに限る。次項から第四項までにおいて同じ。) に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。」 (同法第九十五条)

あなたの実演が録音された商業用レコード放送有線放送で利用された場合、放送事業者及び有線放送事業者に対して利用料を請求できる権利です。ただし非営利・無料で当該放送を受信して同時に有線放送を行った場合は適用されません。

CD等のレンタルについて使用料を請求できる権利

「貸レコード業者は、期間経過商業用レコードの貸与によりレコードを公衆に提供した場合には、当該レコード(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係るレコード製作者に相当な額の報酬を支払わなければならない。」 (同法九十七条の三第3項)

あなたの実演が録音された商業用レコード公衆向けにレンタルされた際、最初に販売された日から起算して2年目から50年目までの間、その貸レコード業者に対して利用料を請求できる権利です。

なお1年目は貸与権が適用されます。

生の実演が含まれる放送の有線放送による同時再送信について使用料を請求できる権利

「有線放送事業者は、放送される実演を有線放送した場合 (営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金 (いずれの名義をもつてするかを問わず、実演の提示につき受ける対価をいう。次条第一項において同じ。) を受けない場合を除く。) には、当該実演 (著作隣接権の存続期間内のものに限り、第九十二条第二項第二号に掲げるものを除く。) に係る実演家に相当な額の報酬を支払わなければならない。」 (同法第九十四条の二)

あなたの実演が含まれる放送を同時に有線放送された場合、有線放送事業者に対して利用料を請求できる権利です。ただし非営利・無料で放送された有線放送には適用されません。

以上の8種類が実演家の財産権です。

備考

実演家の権利には以下の備考が添えられています。

登録の必要なく実演家の権利が発生する

「前各項の権利の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」 (同法第八十九条第5項)

著作者の権利同様、登録の必要なく著作権が発生します。

実演家の権利は、著作者の権利とは別に保護される

「この章の規定は、著作者の権利に影響を及ぼすものと解釈してはならない。」 (同法第九十条)

著作者の権利と実演家の権利は別に保護されます。あなたが著作し、かつあなたが実演する場合、著作者の権利と実演家の権利の両方を有することになります。

実演家人格権は他人に譲渡できない

「実演家人格権は、実演家の一身に専属し、譲渡することができない。」 (同法第百一条の二)

実演家人格権は他人に譲渡することができません。また放棄することもできません。

実演家の財産権は他人に譲渡できる

「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」 (同法第六十一条第1項) 「第六十一条第一項の規定は著作隣接権の譲渡について (中略) 準用する。」 (同法第百三条)

実演家の財産権はその一部または全部を譲渡することができます。権利のひとつひとつを別々の他人に譲渡することもできます。よって実演した時点では同一人物であった実演家と実演家の財産権者がのちに別の人物になることがあります。

実演後50年経つまで保護される

「著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時に始まる。実演に関しては、その実演を行つた時」 (同法第百一条第1項第一号)
「著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時をもつて満了する。実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時」 (同法第百一条第2項第一号)

実演家の財産権はその実演を行った時から保護されます。そして実演が行われた年の翌年から起算して50年を経過する時点まで存続します。例えば2000年1月15日に行われた実演は、翌年2001年1月1日から起算して50年後の2050年12月31日まで保護されます。

以上が実演家の権利に付随する主な特記事項です。

つづいて 「レコード製作者の権利」 について見ていきましょう。

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※著作権法をもとに制作現場の一般事情を加味し、かつ音楽分野の視点で構成しています。図版・文章の正確性を保障するものではありません。詳しくは文化庁発行の 「著作権テキスト」 「著作権に関する教材資料等」 をご覧ください。
※このおぼえがきは平成25年に書いたものです。閲覧されている現在の状況とは異なる場合があります。
※参考文献 : 『著作権テキスト/文化庁』 『すぐに役立つ音楽著作権講座/秀間修一』